4月25日のNHKクローズアップ現代でAIによる仕事の特集があったようです。

その中で、野村総研によるAI・ロボットに置き換わる可能性のある仕事が示されており、公認会計士は85.9%税理士は92.6%置き換わる可能性があるそうです。
私は、これは定義の問題なのかなと思っています。

公認会計士=監査をする人。
税理士=会計記帳、税務申告書を作る人。

と定義すると、ある程度事実で、80%以上の人の仕事はなくなるかもしれません。

なくなる分野

公認会計士の監査実務

現時点では、正直大手の使っているAIでいい話はあまり聞きません。むしろ仕事増やしてるんじゃないか説もあります。
しかし、将来においてある程度は使い物になるという前提を置くと、監査の業務の工数はかなり減らすことができるのではないかと思います。
監査計画部分もかなり形式的なところが多いので、AIは活躍するでしょう。何度も同じような情報をいろんな調書に反映させていく必要があるのですが、これもけっこうめんどくさい。このあたり、どこかのマスター調書でもいじればちゃんと反映できる、計画修正を行ってもこれもちゃんとすべての調書に変更を反映できるという漏れなく反映してくれるようなAIがあれば時間削減できます。
実証手続においても、残高確認状の自動化、リードの自動化、元帳・固定資産台帳・借入明細・給与明細等のデータを利用することでオーバーオールテストの精密化も可能でしょうし、いろいろできそうです。
本当に究極の監査AIができれば、データを入れる⇒問題事項の検出⇒パートナーによる判断。で業務は完結する可能性もあるので、生き残るのはデータ加工する人とパートナーだけになる可能性もなくはないという点で、85%の公認会計士の仕事はなくなるかもしれません。
監査そのものは上場企業や一定規模以上の会社に法律で受けることがで定められているのでなくなることはありません。しかし、比較的システマチックなものでもあります。何も問題が起こらなければ、かなりの部分がAIのみで業務は完了するかもしれません。
私自身はそれはそれでいいことであり、AIにできることをあえて会計士がやる必要はないと思っています。

税理士の税務申告と記帳業務

これは、正直言って監査よりもなくなる可能性が高いという意味で、92.6%は妥当なのかもしれません。
記帳業務、申告業務に関してはAIがやるほうが早いし、確実と言えます。
すでに、領収書の写真を撮るだけで記帳できたり、銀行口座やクレジットカード明細と連携できして自動記帳できる仕組みもありますので、記帳業務が縮小していくのは間違いないでしょう。
税務申告書も、実務で見ていますと普通に本来とれるはずの控除を使っていなかったり、漏れがあるものもチラホラあります。申告書こそ、試算表等の設定をすればほぼ自動で作成することができますし、AIを利用すれば控除漏れ等がなくなる分、確実だと言えます。
監査以上に税務はシステマチックです。特に中小企業はそこまで複雑なことをやっておらず、かなりシンプルな申告書のケースが多いので、あえて税理士をいれなくても、申告ができるようになると思います。

それでも公認会計士と税理士業務がなくならない理由

公認会計士は業務範囲が広い

なくならない理由として、公認会計士の仕事はかなり幅広いという点があげられるでしょう。独占業務として会計監査が認められていますが、これは公認会計士の仕事の一部にすぎません。
経理、内部統制、経営企画、デューデリ、バリュエーション、新規上場支援、資金調達支援、企業再生、M&A etc. 等、会計はほぼすべてのビジネス活動で必須の分野であり、会計の専門家である会計士はかなり汎用性が高いです。
転職市場においても、公認会計士の価値は高く、経理のみならず、いろいろな業種・職種で公認会計士の募集をやっています。

しかしここで問題になりうるのは、監査は会計士の土台であり、この下積みがあるからこそ他の分野で活躍ができるようになるのに、この下積み部分がAIに代替されるとスタッフの教育が行き届くのかという点です。

税理士は中小企業の参謀である

税理士のメイン顧客である中小企業・個人は、思っている以上に経理機能が弱いです。むしろ、経理機能を担っているのは税理士というケースも多いでしょう。このような状態だと、例えAIがどれだけ進化してもそれを理解できる人が会社にいなければ、AIがきちんとした帳簿を作ったとしても、それを活用することができません。会社の問題点や課題といったものが数字面から読み取れない可能性が高いのです。
ここで、税理士が中小企業の参謀として、今の実態を示し、どのように改善ができるかを提案したり、必要な銀行借り入れの支援を行ったり、経営者のよき理解者となることで存在感を示すことは可能だと思います。
そして、これは会計事務所の税理士たちが今でもメインでおこなっている業務だと思います。こういう業務を行っている税理士にとっては、AIは自らの業務負担を減らしつつ、付加価値をつける機会をくれるよいパートナーになりうると思います。

AI時代に苦しむことになるのは非税理士の事務職員です。彼らは、仕訳入力や証憑整理、クライアント訪問等を行っていますが、かなりの部分をAIにとってかわられる可能性があります。
会計士でもそうなのですが、AIで一番苦しくなるのは、そこで仕事をしている無資格者かもしれません。

そして、こちらも会計士同様に、AIの躍進により記帳や申告書作成の機会が減ることで、税務に対する感度が若手税理士の中で落ちていく可能性もあります。

AI時代を生き残るために

AI時代となっても、会計士・税理士の業務はなくなりません。
しかし、それは今まで通りやっておけば生き残れるという意味ではありません。
最初の定義通りの仕事しかしなければ、やはりかなりの割合で仕事がなくなっていくでしょう。いままでの仕事ややり方に固執すれば負け組となりうる可能性は高いでしょう。
むしろうまくAIを活用し、仕事の幅を広げ、変化を柔軟に受け入れることが重要になってくるのは間違いありません。
来るべきその日に備えて、仕事の幅、専門性を高める努力をし続けようと私は思っています。

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