
2018年の4大監査法人(あずさ、新日本、トーマツ、あらた)の業務財産状況説明書が出そろいました。
この情報を利用して、比較分析したいと思います。
準大手の中で最も大きい太陽有限責任監査法人(東芝を受けるか?と言われていました)の財産状況も比較対象に入れてみました。
最後に管理人が財務情報をベースに「就職するなら、ここ!」というオススメと、逆に「ここは嫌だな」という法人も選んでみました。
なお、以下特記事項がない限り百万円単位です。
Contents
規模ランキング!
売上高ランキング!
1位:トーマツ
2位:新日本
3位:あずさ
4位:あらた
5位:太陽
詳細は以下の表のとおりです。
あずさ | 新日本 | トーマツ | あらた | 太陽 | |
---|---|---|---|---|---|
監査収入 | 76,549 | 83,087 | 74,284 | 23,455 | 6,534 |
非監査収入 | 20,571 | 15,854 | 30,419 | 22,167 | 426 |
収入合計 | 97,120 | 98,941 | 104,703 | 45,622 | 6,960 |
(監査割合) | 79% | 84% | 71% | 51% | 94% |
新日本の売上が1千億円割れし、逆にトーマツが1千億円に乗せてきました。
監査業務ではトーマツは3番手につけているのですが、非監査業務収入がダントツ1位で結果的に総収入ではトーマツが1位です。
監査業務割合で印象的なのはあらたですね。約半分が非監査収入で、非監査収入だけ見れば新日本、あずさを抑えて堂々の2位。業務内容が多才だと、いろいろな経験ができる可能性がありますね。
クライアント数ランキング!
ここで、売上高と関連するクライアント数ランキングも見てみましょう。
1位:新日本
2位:トーマツ
3位:あずさ
4位:あらた
5位:太陽
あずさ | 新日本 | トーマツ | あらた | 太陽 | |
---|---|---|---|---|---|
監査クライアント | 3,558 | 3,889 | 3,338 | 1,116 | 637 |
非監査クライアント | 2,120 | 2,799 | 2,940 | 1,241 | 247 |
合計クライアント数 | 5,678 | 6,688 | 6,278 | 2,357 | 884 |
新日本がトーマツを抑えてクライアント数ではトップです。
こうなると気になるのは、1クライアント当たりの単価です。
クライアントあたり単価 | あずさ | 新日本 | トーマツ | あらた | 太陽 |
---|---|---|---|---|---|
監査 | 21.5 | 21.4 | 22.3 | 21.0 | 10.3 |
非監査 | 9.7 | 5.7 | 10.3 | 17.9 | 1.7 |
総平均 | 17.1 | 14.8 | 16.7 | 19.4 | 7.9 |
監査はほぼ横並びですね。太陽はぶっちぎりで安くて大手の半額!これはおそらく中・小規模クライアントが中心だからでしょうね。
そして、非監査単価が全く違います。新日本が約5百万円に対してあずさ、トーマツは約10百万円で倍、さらにあらたはその倍近くの18百万。
監査報酬は公表されていますので、同業他社比較で横並びになりがちですが、非監査の場合にはどれだけ付加価値を付けたとクライアントに思ってもらえるかが大事です。同じ案件でも提示の仕方、先方の納得感で価格は大きく変わってきます。そういう意味では新日本は営業下手で、あらたは営業上手といえるのでしょう。
営業利益ランキング
次に稼ぐ力を示す営業利益です。
1位:新日本
2位:トーマツ
3位:太陽
4位:あずさ
5位:あらた
あずさ | 新日本 | トーマツ | あらた | 太陽 | |
---|---|---|---|---|---|
営業利益 | 484 | 1,822 | 1,008 | 88 | 646 |
営業利益率 | 0.50% | 1.84% | 0.96% | 0.19% | 9.29% |
新日本がトップです!大手はどこもかろうじて利益を出しているという印象ですね。
しかし、ここで太陽が大躍進の3位です。営業利益率だとダントツトップ!
各法人の売り上げに占める費用の割合から要因を探りましょう!
各種費用/収入合計 | あずさ | 新日本 | トーマツ | あらた | 太陽 |
---|---|---|---|---|---|
人件費率 | 69% | 64% | 70% | 69% | 67% |
人材開発費率 | 1% | 1% | 2% | 2% | 1% |
施設関連費率 | 6% | 6% | 6% | 5% | 5% |
IT及び通信費率 | 3% | 6% | 3% | 2% | 2% |
その他業務費率 | 20% | 21% | 19% | 21% | 16% |
(注)費用比率はトーマツと太陽の業務委託費(おそらく非常勤費用)を人件費からその他に移して計算しました。他法人もおそらくそうしているので。
こう見ると各数字はほぼ横ばいですね。新日本の人件費率が低いのが少し目立ちますが。
太陽は、どの費目も少しずつ他法人よりも良いです。
特にその他業務費はかなり他法人よりいいですね。非常勤が少ないのでしょうか?支払手数料率(業務委託費率)が他法人よりもだいぶ低いです。これが利益率の源泉かもしれません。
けっこう自前でやってるんですかね。
これを見る限り、太陽はなにかの投資をケチって利益を上げているというわけでもなさそうですね。
むしろ、経営上手の印象です。
ただ、非常勤が少ないとなると、プロパー従業員にしわ寄せが来ている可能性もありますが。。。(そのあたり、従業員ランキングで見てみます。)
従業員ランキング!
気になるわー。知りたいわー。ぐへへ。
人員数ランキング!
まずは、人員数です。
1位:トーマツ
2位:あずさ
3位:新日本
4位:あらた
5位:太陽
あずさ | 新日本 | トーマツ | あらた | 太陽 | |
---|---|---|---|---|---|
社員 | 569 | 528 | 527 | 116 | 56 |
特定社員 | 34 | 12 | 51 | 29 | 1 |
社員+特定社員 | 603 | 540 | 578 | 145 | 57 |
社員比率 | 10% | 10% | 9% | 5% | 13% |
公認会計士 | 2,649 | 2,584 | 2,706 | 900 | 195 |
会計士試験合格者 | 1,220 | 1,049 | 1,232 | 532 | 90 |
有資格者(社員以外) | 3,869 | 3,633 | 3,938 | 1,432 | 285 |
資格者比率 | 63% | 65% | 59% | 47% | 66% |
監査補助者 | 986 | 647 | 1,893 | 882 | 49 |
事務員 | 724 | 758 | 261 | 596 | 43 |
補助者等 | 1,710 | 1,405 | 2,154 | 1,478 | 92 |
資格者比率 | 28% | 25% | 32% | 48% | 21% |
合計 | 6,182 | 5,578 | 6,670 | 3,055 | 434 |
(注)太陽については、社員と公認会計士情報しかなく、2017年12月時点の求職サイトの情報の人員数等から推定しています。7月1日情報はあるのですが、優成との合併後なので指標として使えませんでした。
トーマツがダントツトップですね。これは監査補助者利用率があずさ、新日本よりだいぶ高いのが理由です。
しかし、それより面白いのは、あらたの人員構成ですね。他法人は有資格者が6割前後ですが、あらただけ47%と全く違うスタイルです。
あらたのパートナー率は他法人の半分、会計士比率を抑えて補助者率を高めています。これは中央青山は監査補助者がUSCPAになっていくケースが多かったという話を聞いたことがあるので、そういう流れを受け継いでいるのかもしれません。
しかし、パートナー比率が低いと、パートナーの激務が想定されます。
1人当たり人件費ランキング!
1人当たり人件費は、(給与+賞与)/総人員で計算しています。
1位:太陽
2位:新日本
3位:トーマツ
4位:あずさ
5位:あらた
あずさ | 新日本 | トーマツ | あらた | 太陽 | |
---|---|---|---|---|---|
報酬 | 42,547 | 42,675 | 50,387 | 25,500 | 3,606 |
賞与 | 13,368 | 8,546 | 10,329 | 670 | |
合計 | 55,915 | 51,221 | 60,716 | 25,500 | 4,277 |
1人当たり年収 | 9.04 | 9.18 | 9.10 | 8.35 | 9.85 |
なんと1位は太陽!そして、最下位はあらた!
これは、さきほどの人員構成から想像がつきます。
太陽は他法人と比較すると、パートナー比率が高く、事務員比率が低いです。結果的に、平均給与が高くなっているものと思われます。
一方のあらたですが、太陽の逆ですね。パートナー比率が低く、事務員比率が高いので、平均給与が低いのでしょう。
会計士だけ見ると、あまり給与は変わらない可能性もありますね。
ところであらたはボーナスないんですかね??
しかし、この単価が結構違うというデータがある一方で、各法人の人件費率が概ね7割でそんなに変わらないという事実から推測するに、太陽の会計士激務、あらたの会計士事務員補助サポート手厚いという可能性が出てきました。
一人当たりクライアント数(売上)ランキング!
さて、上記の情報をベースにどれぐらい仕事が大変か推測するために、1人当たりクライアント数を計算してみます。
パートナー当たりクライアント数
単純に社員(特定社員除く)1社につき1人がサインするとした場合に何社サインすることになるかを示します。なお、通常は2名でサインすることも多い+審査もしないといけないので、実際負担はさらに大きいです。
1位:あらた
2位:太陽
3位:新日本
4位:トーマツ
5位:あずさ
あずさ | 新日本 | トーマツ | あらた | 太陽 | |
---|---|---|---|---|---|
社員当たり売上 | 170.7 | 187.4 | 198.7 | 393.3 | 124.3 |
社員当たり客数 | 10.0 | 12.7 | 11.9 | 20.3 | 15.8 |
ダントツであらたです!他法人の倍!1人あたり売上も倍!これは非監査割合が大きい影響もあるでしょうが、パートナーはしんどいですね。20社を仮に見るとすると、雑務やわずかな休日を考慮して、多く見積もって200日クライアント業務ができるとしても、1社あたり年間10日。1ヶ月につき、1日も関与できない計算です。
けど、ちゃんと監査せんと、大問題やからちゃんと見なあかんしな。
でも、非監査割合考えたら、実質一番きついの太陽ちゃうんか?ほんまのところ。
太陽は客は多いが売上は低いという状況です。気になったので、非監査を除いた監査クライアント数だけでパートナー負担を見てみます。
あずさ | 新日本 | トーマツ | あらた | 太陽 | |
---|---|---|---|---|---|
社員当たり監査客数 | 6.3 | 7.4 | 6.3 | 9.6 | 11.4 |
やはり、太陽がきつい。あずさ、トーマツと比べると倍なので、命削って仕事してると思います。
特に最近は品質管理が厳しくなってきてるから、細かいところまでパートナーマターになってきてるし。
パートナーなんかなりたくない人増えてきてるしな。ぼくの知ってるパートナーで、正月休みの次の休みが3月下旬の日曜日(約90連勤)の人いたわ。。。太陽はもっときついかもなあ。。。
会計士当たりクライアント数ランキング!
会計士当たりクライアント数は、会計士が全員インチャージをやった場合に、一人何社担当することになるかの数値を示します。なお、通常はマネージャーとインチャージは別の人がやるでしょうから、1人当たりインチャージ数はこれよりも多いです。
合格者や補助者当たりクライアント数は、どの程度インチャージを支えることができるかの目安になります。
1位:太陽
2位:あらた
3位:新日本
4位:トーマツ
5位:あずさ
あずさ | 新日本 | トーマツ | あらた | 太陽 | |
---|---|---|---|---|---|
会計士当たり客数 | 2.1 | 2.6 | 2.3 | 2.6 | 4.5 |
合格者当たり客数 | 4.7 | 6.4 | 5.1 | 4.4 | 9.8 |
監査補助者当たり客数 | 5.8 | 10.3 | 3.3 | 2.7 | 18.0 |
実務部隊当たり客数 | 1.0 | 1.3 | 1.0 | 0.8 | 2.3 |
ここでもダントツで太陽がきつい。どの実務担当者も大手の2倍ほどの負担です。社員もきつけりゃ、会計士もきつい。
合格者一人で9.8社も行くのは不可能です。せいぜい5社でしょう。補助者も同様です。こう考えると、補助役ゼロの現場も多そうです。
実質、インチャージ一人で回してるんじゃないかレベルの負担率です。補助してくれる人なしでインチャージ4.5社もやらされたらきついですね。
一方、大手を見てみると、あらたは会計士負担はきついのですが、補助者をうまく使って実務部隊全体での負担は一番低いですね。これなら、インチャージも上手く回せそうです。
大手では新日本がきつそうですね。太陽と比べると誤差の範囲ですが、補助者が相当少ないのと、合格者が少ないのが会計士のインチャージ負担をきつくしそうです。東芝問題かつ売り手市場なので、だれも好き好んで新日本にはいかないので、合格者が少ないのでしょう。
そして、地味にパートナー・会計士ともに負担が一番少ないのはあずさ!どのランキング見てもあずさは1番にはならないのですが、働きやすさという意味ではいいのではないでしょうか。深夜残業禁止もいち早く取り入れていましたし。
従業員数あたり事務員数ランキング!
最後に、事務員採用を考えている人のために、事務員一人当たりで事務員以外の人を何人支えているのかを見てみます。
1位:トーマツ
2位:太陽
3位:あずさ
4位:新日本
5位:あらた
あずさ | 新日本 | トーマツ | あらた | 太陽 | |
---|---|---|---|---|---|
従業員数当たり事務員数 | 7.54 | 6.36 | 24.56 | 4.13 | 9.09 |
これはダントツでトーマツがきついです。これどうなってんのレベルの1事務員24人負担。実はトーマツの事務員数は前年から約半減しています。一方で、監査補助員数が増加しているので、トータルではほとんど変わっていません。これは単純に事務員が補助者にカウントされいるようになったのか、異動になったのかはわかりませんが、このあたりにカラクリはありそうです。
これをみるに、あらたの事務員が一番恵まれてそうですね。
まとめ
今年は、売上一位から新日本が陥落し、トーマツがトップに躍り出ました。
しかし、どの法人も利益は全部吐き出しているようで、対して儲かっていません。
そんな中、準大手の雄、太陽だけはうまく経営を行っていることがわかります。
一方で、従業員の負担を見ていくと、太陽がきつい!1人当たりの給料はどこもそんなに変わらないようですが、雰囲気だけ見ると太陽はパートナーが他法人よりもたくさんリスクを負っており(=担当社数多い)、本来2倍払うべき激務であるところを常勤の固定給をうまく使うことで他法人並みに抑えて、利益を上げている構図が推測されます。
そして、大手の中ではあらたが少し独特の経営スタイルを持っており、非監査業務で稼ぎ、多くの会計士以外の従業員を実務部隊として活用しています。
あらたも下っ端ならええけど、絶対パートナーにはなりたくはないなあ。そして、太陽はハードワークで死ぬ気がするから嫌やな。。。まあ、入ってみないとわからんけどな。