最近は、監査法人界隈ではKAMの話題がけっこう出てきています。
KAMとはKey Audit Mattersの略称で、「監査上の主要な検討事項」と訳されています。
従来の監査報告書は定型文でしたが、今後は監査法人の出す監査報告書には、どういうところにどういう理由で注目して監査を行ったのか等の企業に応じた記載が求められるようになります。
私自身、KAMについて研修を受けたり記事を読んだりしていますが、やはり実例を見に行った方が早いと思いますので、いろいろな事例を見ていきたいと思います。
前回のバーバリー同様、先行事例である英国上場企業を選びます。今回は、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(British American Tobacco:BAT)を取り上げたいと思います。ラッキーストライクが有名で、日本でも販売されています。
日本では、高配当株として一部の投資家の方には有名です。この記事を書いている時点で6.4%の配当利回りです。
ここを取り上げたのは、タバコ銘柄にはどういうリスクがあるのか見てみたいので、ピックアップしました。
Contents
2018年 ブリティッシュ・アメリカン・タバコ アニュアルレポート
今回は2018年のアニュアルレポートを参照していきます。
会計監査人はKPMGです。監査報告書(Independent Auditors' Report)はP.115~P.120の6ページです。ロールスロイスの半分ぐらいで少なめですね。
最初は日本や米国基準と変わらない定型文です。次の項目からがKAMになっています。
なお、今回はKPMGなのでロールスロイスと同じですね。
前回のKPMGでは「Dynamic Audit Planning Tool」というダイナミックなツールの図がありましたが、今回のBATにはありませんね。KPMGで必須というわけではないみたいです。
Key Audit Matters!
2018年のKAMは以下の3個です。ロールスロイスの9個と比べると少ないですね。
バーバリーは4個なので、このぐらいが普通なのかもしれません。
・Goodwill and indefinite lived intangibles impairment – arising from the Reynolds American Inc. acquisition in 2017. New 2018 risk. (2018年の新リスク:2017年に買収したthe Reynolds American Inc.から生じたのれんと償却しない無形固定資産の減損)
・Recoverability of parent Company’s investment in subsidiaries. (子会社投資の回復可能性)
・Purchase Price Allocation – valuation of brand intangibles. New 2017 risk (ブランド資産の評価と購入価格の配分)
・Recoverability of parent Company’s investment in subsidiaries. New 2017 risk
KAMの詳細説明


重要性の基準値、監査スコープ
KAMについては、上記の事項がメイントピックスです。次はPwC同様に監査スコープ、重要性の基準値の記載があります。KPMGはここで図を使っており、わかりやすいです。
・重要性の基準値をどう決めたか
監査上の重要性の基準値が記載されています。
会社(単体)の重要性:50百万ポンド(連結子会社の構成要素として割り当てられている金額)。
・監査スコープ(マルチロケーション)をどう決めたか
監査対象ユニットをどのように決めたか記載があります。以下のように図でカバー率が示されているのでわかりやすいですね。
これは、ロールスロイスと同じ図を利用しています。
その他の項目
ここから下は、完全にテンプレートっぽいですね。KPMGもPwCも同じです。
・GCに問題がないか
問題ない旨記載されています。
・Annual Reportに記載されている戦略レポート、役員レポート、監査報酬、その他に問題がないか
適切である旨記載されています。
・財務諸表の作成責任と監査責任について
監査人の責任は監査意見を出すことにあることについて記載されています。
まとめ
以上、BATのKAMでした。
同じKPMGでも、ダイナミックツールを使わなかったり、売上認識や経営者不正をいれなかったり、チームでの裁量も大きそうです。
とはいえ、KAMの説明の見やすさはPwCよりわかりやすく、概要はPwCの方が見やすいという状況は同じですね。
次回は、EYかDeloitteを見たいと思います。