
AUDは日本人受験者合格率が3割程度と一番低い科目です。
fa-arrow-circle-right参考USCPAの日本人の合格率と難易度
これは、AUDとは?という点の理解が薄いためだと思います。
監査の最終目的は財務諸表が適正かどうか意見を出すということです。
この目的を達成するためにそれぞれの論点がお互いに関係してくるので、ひとつわからない論点があるとつながりがわからなくなる可能性もあります。なので、全体として大きく捉えていかないと何をやっているのかよくわからなくなりやすいと思います。
試験内容について
まずは、試験内容について確認しましょう。AICPAから公表されている資料をまとめています。
科目名 | 内容 | 配点 | |
---|---|---|---|
Auditing and Attestation | ①職業倫理、責任、一般原則 | 約15-25% | |
監査、証明等 | ②リスク評価と計画 | 約20-30% | |
③監査手続と監査証拠 | 約30-40% | ||
④総括と意見表明 | 約15-25% |
次に必要なスキルベースでの配点です。上にあるスキルほど難しい内容になります。
スキル | 内容 | 配点 |
---|---|---|
Evaluation | 結論を導き出すための判断。
上記の②と③の範囲 |
約5-15% |
Analysis | 複数の状況の相互関係を分析し、必要な監査証拠を見つけ出す。
上記の②と③の範囲 |
約15-25% |
Application | 知識やテクニックの活用。
上記のすべての範囲で求められる。 |
約30-40% |
Remembering and
Understanding |
暗記と理解。
上記の①と④の範囲がメイン |
約30-40% |
次に問題構成です。試験時間は4時間です。
Testlet① | Testlet② | Testlet③ | Testlet④ | Testlet⑤ | |
---|---|---|---|---|---|
形式 | Multiple Choice(選択式) | Task Based Simulation | |||
問題数 | 36問 | 36問 | 2問 | 4問 | 3問 |
配点 | 50% | 50% |
AUD学習開始前に知っておくべき全体像
AUDの範囲はAudit(監査)に限りません。非保証業務等も含まれます。ただ、監査から出てくるものが多いですので、まずは監査を押さえましょう。
監査の目的
まず、監査の目的ですが、財務諸表全体として適正かどうかについて監査人(=CPA)が意見を出すことにあります。この目的のために、監査人の独立性も、職業倫理も、監査計画も、リスク評価も、監査手続も、監査報告書も、監査に関わる全てのプロセスが行われます。なので、基本的にAUDで習うものはすべてこの「意見」のために行われていると認識してください。
そして、監査対象になるものがFinancial Report(FS)でこの中に、貸借対照表、損益計算書、注記等が含まれます。FARで習いましたね。
こういったFSは会社が自分で作るのですが、会社が作った財務諸表ってある意味「自分のテストを自分で採点する」ようなイメージになります。投資家にウケるためにもうちょっと売上を増やしとこうとか、やろうと思えばズルができてしまうし、経理部の知識が不十分であれば間違った会計処理をしてしまうかもしれません。
こういうズルをしているかもしれない財務諸表をベースに投資家は投資したり、銀行はお金を貸したりしたくありません。
そこで、独立した立場のCPAが監査を行い、「この財務諸表は全体的に問題なし」「問題あり」といった意見を出すことで、財務諸表の信頼性を高めることができるのです。
AUDは逆から考えろ!
さて、とっつきにくいAUDですが、目的が分かってしまえばあとはそれを達成するためにどうすればいいのか考えるだけです。
つまり、前から順番に考えていくのではなく、ゴールから逆算して、目的に必要な条件を整えていくのです。
ざっくり考えると以下のようになります。
目的:財務諸表が適正かどうか意見を出す!
Q:意見ってどんな種類があるの?
A:適正や、不適正、限定付き意見等、いろいろあって、それぞれ異なる監査報告書の書き方になるよ。
Q:どうやって、意見の種類を決めるの?
A:意見を出すための基礎となる十分な監査証拠を集めて評価しよう!
Q:でも、会社の1年間の記録全部は見れない。どうしよう?
A:じゃあ、一部をサンプルでテストしよう。
Q:サンプル以外のところでミスってるかもよ?どうやってテスト範囲を決めるの?
A:科目のリスクに応じて決めていこう。リスクが高いところはしっかりやろう。
Q:どうやってリスクを評価する?
A:まずは、科目が会社にとって大事かどうか判断しよう。そして、会社が自分でやっている内部統制が機能しているか評価しよう。ちゃんと内部統制が機能していれば、ミスは減っているはず。逆に機能していないところはリスクが高い。
Q:OK、リスクアプロ―チをとるんだね。でも科目が大事かどうかってどうやって判断するの?
A:監査上の重要性の基準値を決めて、それを上回るものは大事にしよう。あとは、会社の事を理解して、ビジネス上重要で、ずるしたくなるような科目も大事な科目にしよう。
Q:どうやって会社を理解するの?
A:経営者インタビューや、同業他社の状況、過去の経験等を活用しよう!
Q:わかった。でもそもそもCPAのことを投資家が信用してくれるかな?会社の身内と思われたら信用してもらえないよ
A:利害関係をなくして独立性を確保してるし、職業倫理も理解しているから大丈夫。
じゃあ、いままで検討したことを監査計画に落とし込んで、実行していこう!
本来の業務の流れでは監査計画が最初に来ますが、前から理解するのではなく、目的のためにこれは何をしているのか?を意識した方が理解しやすい科目だと思います。
次回からは、もう少し具体的なAUDの内容の解説について書きたいと思いますが、細かい論点はいったん省略して、まずはざっくり監査を理解しましょう。
②を書きましたfa-arrow-circle-down