USCPA(米国公認会計士)試験の難易度って簡単なイメージを持っていないでしょうか。

私は、公認会計士もUSCPAも保有していますが、結論から言うと「USCPA試験は普通に難しい」です。

日本の公認会計士が異常に難しいというだけです。

いろいろ試験について比較してみます。

どちらを取得すべきか迷っている人にも参考になるかと思います。

JCPA vs USCPA

受験者数と合格率

USCPAと公認会計士の受験者数、合格率です。

U.S.CPA

(2015年)

公認会計士

(2018年)

受験者数(USCPAは日本人のみ) 1,793人 11,742人
合格率 36.4% 11.1%
必要勉強時間(CPA会計学院より引用) 1,500時間 3,000時間

(注)USCPAは科目合格の平均合格率なので、4科目全部合格になると合格率はもう少し下がると思いますが、1科目受かる人は他の科目も受かる可能性が高いと思いますので、20%~30%ぐらいなのではないかと思います。

上記の通り、合格率、勉強時間を見ても公認会計士試験の方が難しいです。なお、私の場合ですが公認会計士試験は4,000時間以上勉強していますが、U.S.CPAは700時間ぐらいです。

上記のCPA会計学院のデータは、公認会計士試験のミニマムの勉強時間と、U.S.CPAの平均的な勉強時間が記載されているように感じます。U.S.CPAは1,000時間ぐらいで多くの人が合格できるのではないでしょうか。一方、3,000時間で公認会計士試験をパスするのはけっこうなエリート層だと思います。

これは、下記の受験スケジュールに記載のとおり、公認会計士試験の方が受験チャンスが少ないので、失敗すると追加で+1年勉強する必要があるのでどうしても1発合格者と2度目受験の人とで大きな時間の差が出ることも一つの要因です。

試験範囲、試験科目数、試験時間

U.S.CPA 公認会計士
科目数 4科目 5科目(短答4科目、論文5科目)
試験時間 各科目4時間 短答式:3科目1時間、1科目2時間

論文式:5科目2時間、1科目3時間

上記のとおり、科目数は公認会計士の方が多いのですが、科目の切り分け方が異なるだけで実質そこまで変わらないです。むしろ、範囲だけみるとUSCPAの方が広いです。

USCPAはFAR(会計)、AUD(監査)、REG(税金・会社法)、BEC(ビジネス)の4科目です。

公認会計士は会計学、監査論、企業法、租税法の4科目が必須で、選択科目として経営学、経済学、民法、統計学の4科目から1科目の合計5科目です。(なお、会計学は財務会計論と管理会計論の2つあるので、実質6科目です。)

USCPAのBECには経営学・経済学・統計学・原価計算・管理会計・民法が含まれていたり、REGに税金・会社法が含まれているので、USCPAの方は公認会計士試験の必須科目+選択科目のすべてが試験範囲に入ってくるイメージですね。

受験した感覚でいうと、各科目の深さは日本の方が圧倒的に深いですが、試験範囲の広さではU.S.CPAの方が広いです。

上述の通りBECには、経営学・経済学・統計学・民法(契約関係とか)・原価計算・管理会計等が含まれているので、日本では勉強不要な選択科目も範囲に入ってきますし、FARにはパブリック系(政府会計、NPO会計)も範囲に入ってきます。AUDでは、非保証業務も入ってきますし、REGでは、環境保護法、雇用機会均等法、セクハラとかがからむ人権法も範囲に入っていますし、けっこう細かいところまで覚える必要があります。試験時間が4時間もあるというところからも想像できると思うのですが、かなり細かい問題を聞いてきます。

受験スケジュール

USCPAは3月、6月、9月、12月を除きほとんどすべての日に受験が可能です。ただし、1四半期に同じ科目を2回受けることはできないので、同じ科目は年に4回が上限です。科目合格が可能で、一気にすべて受かる必要はありませんが、一つ目の合格から1年半以内に受験が必要です。

公認会計士は短答式が年に2回(12月と5月)受験可能、短答式合格者は年に1度(8月)、論文式を受けることができます。現行試験では、科目合格も可能です。

USCPAは落ちてもけっこうすぐに再受験できるので、これはUSCPA試験のほうがかなり合格しやすい要因だと思います。USCPAがもしも日本の公認会計士同様、年1回しか受験チャンスがなければ相当取得にかかる時間は増えますし、難易度もあがると思います。

なお、USCPAはパソコンで受験します。仕切られたブースで各自パソコンをポチポチやります。人によって出てくる問題は違います。公認会計士試験は大学受験みたいに、大学等の大きな部屋でみんな集まってボールペンをカリカリやります。みんな同じ問題です。

必要な費用

USCPAの場合は、多くの州で登録のためには150単位が必要となっています。日本での取得済単位等にもよりますが130単位は取得済で20単位追加でとるという前提で比較します。

また、条件をそろえるためTACのWEBコースを利用し、一発合格を想定します。

U.S.CPA 公認会計士
専門学校(TAC) 535,000円 730,000円
単位取得 118,650円 不要
学歴審査 220ドル 不要
試験費用 出願:175ドル

受験料:208.4ドル×4科目

国際試験料:356.55ドル×4科目

19,500円
合計 945,678円

(2,654.8ドルを110円で換算しています。)

749,500円

1発合格前提だと、USCPAの方が高いですね。公認会計士は落ちると専門学校代がもう一度かかる(安くはなりますが)ので、不合格の時の追加費用は大きいです。

USCPAは試験費用で1科目500ドル以上(出願料は申請ごとにいるので、下手すると600ドル以上)かかりますが、専門学校は比較的長期間利用することができますので、不合格でも公認会計士ほど追加費用はかからないことが多いでしょう。

受験生の特徴(年齢、男女比、学歴)

受験生の特徴も見てみましょう。

U.S.CPA(2015) 公認会計士(2018)
平均年齢 35.9歳 25.0歳
女性比率 26.9% 20.4%
最終学歴 基本的に大卒(州によるが、大卒が受験資格になっているケースが多い。22歳以下の受験生は6名しかいないので、99%以上大卒でしょう。) 大学卒業は47.7%(学生合格、高卒が多いため。)

会社員合格は6.6%のみ

(USCPAは日本での受験者、公認会計士は合格者データである点に注意)

これらの特徴からわかることは、公認会計士は学生時代から目指す人が多いのに対し、USCPAは社会人になってから取得を目指す人が多いという点です。そもそも、大卒じゃないと受験できないケースも多いので、どうしても平均年齢はあがります。そして、私の肌感覚ではありますが、働きながら資格取得を目指す人が大半です。

一方、公認会計士は合格者のうち、大学在学合格は43.1%、高卒は6.2%と2つで50%近くを占めています。この結果、平均年齢は大きく下がります。USCPAではメジャーな会社員合格は6.6%のみです。

女性比率については、U.S.CPA受験者のほうがやや高いですが、特記するほどではありません。

なお、アメリカを含む全世界でのUSCPA受験者ベースでみると、女性比率が50.5%と女性の方が若干多いです。日本ではまだまだ会計士の仕事は男社会であることを示しています。

公認会計士とUSCPAの難易度比較

さて、私の主観ではありますが、公認会計士とUSCPAの難易度を比較すると公認会計士試験の方が圧倒的に難しいです。

何が違う?

結論からいうと、U.S.CPA試験は浅いです。かなり広くそしてかなり浅い。勉強の範囲はかなり広げないといけないのでつらさはあるのですが、そこまで頭を使わなくても覚えているかいないかが最大のポイントになります。そして試験時に求められる能力は早く解く能力です。

一方、公認会計士試験は深いです。そこそこ広くそして深いです。色々な問題は基本的な簿記知識は持っていて当然で、それをどこまで応用できるか等がポイントになってきます。パズル的な要素も含まれます。試験時に求められるのはスピードに加えて問題を理解し、しっかり考える能力でそして計算ミスをひとつすると他の問題も全滅のリスクがあるので丁寧さも必要です。

参考に、公認会計士試験の会計学の問題のサンプルを見てみましょう。

平成30年論文式会計学 問題

見るだけで嫌になるな。。。

というような問題が出ます。これは、U.S.CPA試験合格者ではまず解けません。

というのも、U.S.CPA試験では基本的に1問1論点です。1問1分~2分程度で解く必要があります。一方、公認会計士試験の場合、じっくり腰を据えて1時間近くかけて複数論点が絡む大問を解いていくケースもあります。

USCPAの勉強の仕方では財務諸表が作れるようにはおそらくならないです。ひとつひとつの仕訳はわかるようになると思いますが、全体像をみるような問題は出ません。キャッシュフロー計算書や連結財務諸表も作れないでしょう。一方で、公認会計士試験は比較的全体像を見に行く気がします。なので、公認会計士は財務諸表、連結財務諸表、キャッシュフロー計算書は当然に作れるようになると思います。

USCPAは知識を突っ込めばなんとかなる問題でインプット重視です。公認会計士は仕組みを理解していないと合格できない試験で、インプットだけでなく論述対策などのアウトプット対策が必須です。

そして、USCPAは頑張れば絶対合格できると思います。一方で、公認会計士試験はどれだけ得意な問題が出るかの運要素も大きいように思います。

USCPAの方が難しい点

以上のとおり、公認会計士試験と比較するとUSCPAは簡単と言えます。そして、世間のイメージはこれをベースにUSCPAはけっこう簡単と思っているように思います。

ここで一言。

じゃあ、お前やってみろや!
です。USCPAは日本の試験と比較されるがために簡単な資格とみられがちですが、どちらも受験した身としては、USCPAは決して簡単な資格ではありません。
USCPAが公認会計士試験より難しい点について列挙します。
①英語の試験である(当たり前か。。)。英語得意な人の方が早く受かるかもしれません。
②1問1分~2分とか尋常じゃないペースで4時間問題を解き続けさせられる。
③4時間も試験時間がある=細かい論点がかなり含まれることになる。
⇒覚えることがかなり多い。覚えることだけでいうと、USの方が多い気がする。上述のとおり、経済学・統計・民法(契約・代理人とか)・経営学・パートナーシップ税制・非保証業務・IT・人権法・環境法・政府会計・NPO会計 etc.も範囲に入ってきます。
④米国基準とIFRSが範囲に入るので混乱する。
⑤大卒が前提なので、働きながら勉強時間を確保する必要がある。
という感じでしょうか。
個人的には、勉強時間の確保が一番きつかったですね。公認会計士試験のときは大学生~無職だったので1日中ずっと勉強できましたし、しないと社会人になれないので焦りがありましたが、USは普通に給料がもらえる状態だったので、通勤時間やちょっとした隙間時間で勉強する強い意志が必要でした。

結論

結論としては、USCPAはふつうに難しいです。

「簡単でしょ」

と言うやつがいたら、とりあえず

「じゃあやってみろ」

という感じです。

そして、CPA会計学院のホームページによるとUSCPA資格に必要な勉強時間は難関と言われる社会保険労務士の1,000時間、日商簿記1級の800時間を超える1,500時間です。
決して簡単な試験ではないということがわかると思います。
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